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店主コラム

2007年 4月 6日

「春爛漫」

ほんの数日前まで肌寒い日もありましたが、京都の街もだんだんと桜色に染まり、春爛漫といった風情になってきました。
加茂川の河原では野外の空気を満喫しようと、沢山の人が花見を楽しんでいます。
こういう気分の時は、茶室で釜の煮えの音を聞くのも暑苦しく感じて、何より屋外へ出たいと思うようになるものですね。

茶人は「夏の終わり頃、名残りの気分(過ぎ去ってゆく事を惜しむ心)をもっとも感じる季節に釜を懸け、侘び寂びの風情を心静かに味わい、滅び行くものの美学を愛でるものである。」とは、私の茶の師匠の言葉ですが、名残りとは対極にあるような今の季節にも、茶の湯を楽しむための知恵がきちんと受け継がれています。

茶室に春の日差しが差し込んでくると、その設えもそれに合わせて変わって行きます。その中でも面白いのは、小さな釜を天井から釣るして掛ける、「釣釜」です。

釣釜

釣釜

こうする事で、なんとなく野外で湯を沸かしているような雰囲気が出るのです。
そして、雪融け水が川に流れ込んで、豊かな水量を誇る春の川水を大きな水指に満たして、茶室に持ち込みます。この時に使う大水指は、水屋用の水桶や水瓶に盆蓋をして用います。 こうして、茶室に釣釜と大水指を取り入れ、野外で釜を掛け、春水に満たされた気分を楽しむのです。
この他にも、茶室で春の野外の気分を味わうために、旅行用に茶道具を携帯するための「旅箪笥」を棚として用いる事もあります。

う〜ん。やっぱり、茶の湯にはシーズンオフは無いんですね。
歳をとると、時の経つのが早く感じられますが、来月にはもう初風炉の季節がやってきます。
少し前までは、「季節の移り変わりを楽しむなんて、老人趣味やん。」とか思っていましたが、それが嬉しい自分に気づいて、嬉しいような…悲しいような…

PS、先月のコラムでご紹介させて頂いた、C.W.ニコルさんのMOTTAINAI倶楽部の今年のメインテーマが決まりました。それは、京都府伊根町て獲れる「バチ」という魚で、現地では殆ど価値無しとされています。ホウボウを小型にしたような形で、赤色をしています。味は結構いけるので、期待しています。

※写真は、釣釜を設えた右源太の茶室です。野外の雰囲気を感じて頂けるでしょうか?

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